5. 姑はもう止めた
娘時代、あたり前のようにお見合いをしてこの家に嫁いで来ました。
嫁という差別の中での生活を、不条理だなどと思ったことはありませんでした。
女の幸せは嫁いだ先の家で可愛がられることだと教えられていましたから。
男子を出産した時は、後継ぎを生んだと喜ばれ、鼻が高かったものです。
そして、その子が成人し結婚をし、今回嫁が来たのです。
しかし、嫁は姑である私の意見を聞きもせず、自分の勝手に物事を運びます。
何をするにも相談はしないし、意見を言うと嫌な顔をして返事もしません。
孫に与えた物を、教育上良くないと返されてしまった時には涙がこぼれました。
日に日に、嫁に息子を取られた気持ちが大きくなり、それは辛い毎日です。
時代が変わったせいなのだと思ってはみても、全く我慢できませんよ。
だからって息子に愚痴を言えば、嫁の見方をして、反対に私に文句を言う始末。
今までの私の苦労した人生は、一体何のためだったんだろうって情けなくて…。
この家に嫁いでからは、姑、舅、小姑のため身を粉に働き通しの人生。
夫から優しい言葉をかけられたこともなかった。
夫婦だけの楽しい会話もなく、女として幸せだと感じたこともなく。
テレビドラマの様に、夫に愛される幸せな結婚生活なんてどこにもなかった。
娘時代には、今の様に生き方を自分で選べるなんて考えられるわけもなかった。
親の言う通りにお見合い結婚をする以外の生き方なんて女にはなかったもの。
独りで食べる能力も資格もない女には、結婚するしか生きる道はなかったのよ。
家系を続かせるために、何代もの女たちが働いて支えた…でもそれも終りかな。
今回、嫁を貰ってみたら、私達の時代の女とは全く違う考え方をしているもの。
息子も嫁を愛しているなんて、親に向かって言うのだから、もう驚いてしまって。
正直な気持ちは、人生もう1度、やり直せたら良いのになあ。
やだ、私ったら自分を嘆きながら、同じ道へ息子夫婦を行かそうとしてる。
自分がやってきた辛さを、嫁にも同じように味合わせたいと思っている。
誰かに敵討ちをしたがってる、意地悪ばあさんになってる自分が情けない。
そう、息子夫婦には、私達夫婦とは全然違う、幸せな生活をして欲しいわ。
夫婦でお互いを認め合って、愛し合って自分達だけの家庭を築いたら良いのね。
考えたら、そうなっても、私には何の不都合もないどころか、ほっとするもの。
でも、本心から彼等のために、力を貸すことなんて、できるかな。
うんできるわ。
そう思う自分が好きになってきた。
よかった、時代は、必ず良く変わって行く、私も良く変われそうね。
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Mizuho Mi Suguri